オエビログ60
ボーマンさんなんか0点だ
空の話
ボタンはちきれるんじゃないか
なんだよまた失敗か (右反転文)
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「なんだよまた失敗か。器用な指先、開花して来いよ」
片方だけが大きくなってしまい、するすると解き直すリボンの気配に、ボーマンは不満げな言葉を陽気に告げる。
「もう俺、自分で結びてぇんだけど」
「待ってくださいよ。僕はリボンなんて初めて結ぶんですからね」
ボーマンがいつも鏡もろくに見ず、後ろ手で手早く結んでいるから、簡単にできる思えば意外とそうはいかない。
さっきまでのは練習です、と紐でくくられた上にいつものリボンを撫でつけて、くるくると巡らせていく。
今度は少し巻きすぎた、またほどく。動くに動けないボーマンは、それでもじっと待っていてくれる。
少しぱさついた髪を指に通して、軽く櫛を入れる。室内の弱い光が、ぼんやりとした艶を見せる。
熱のない場所に、熱を感じる。
首筋の近く、そのせいだろうか、触れるたびに、指先から何かが零れていくような気がしていた。
指の熱であたたられていく栗皮色をした髪のひと房を、また懲りずにリボンでくるむ。
やはりなにかが、指先から零れていくような気がしてしまう。
ぽつり、と。さらさら、と。しゅんしゅん、と。
零れてしまった、語られることのない何かが、優しい色のリボンと一緒にくるまれて包まれて、まるで一方的な約束のように
そんな錯覚のまま、やはりどうしても、クロードはうまく結ぶことが出来ない。
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髪キス
エピローグ内のたった一行
好きだとか簡単に言えないことを気付いた瞬間
好きの境界線
おひざ入学のおまけ
石像にキス
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