エル大陸に向かう前。帰りたいのは、今も本心なのか。

以下、メモで描いたとき(070829)の原文。(微修正)
 切ないとか悲しいとか、そんな顔。
 奴が夜空を眺める時には、腹に抱えたものが滲んでいるように見えた。
 空色の目が、晴れた夜の奥底を探すように硬く震わせている。
 何処か浮世だったところのある男。
 遠くから来たと言うには、詳しい土地もなく言いよどむ。
 ……おいおいまさか、そんな遠くからかよ。
 星に帰る姫君の、御伽噺をふと思い出す。
「お前も帰るのか?」
 独り言は、静かな時間には大きすぎる。
 気恥ずかしさを誤魔化す前に、金髪が夜の光に揺れた。
 不安そうに寂しそうに、不思議そうに、細く笑う。
「帰れるなら」
 そうか。やっぱりどっかに帰るんだな。
 それが何処だかが分からなくとも、すとりと胸に答えが落ちてくる。
 落下物のざわりとする心地は、苦笑と共に蹴散らした。
 ロマンティックな空想を、こんなとこで抱いてどうする?


080526

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